私は南アフリカのヨハネスブルグにオフィスを構えるジャパンアフリカトラベルで撮影コーディネーターとして働いています。撮影コーディネーターという職業柄、アフリカ中を広範囲に渡って旅しています。
最近、テレビの取材でマダガスカルに行ってきました。
マダガスカルは、島の動植物の約90%が固有種である「動物の楽園」といったイメージが強いと思います。
でもマダガスカルの人や文化もとっても個性的なんです。アジア・オセアニアから渡ってきた人々、アフリカ大陸からやって来た人々、貿易の拠点としてやってきたアラブ系の人々など、様々なルーツを持つ人たちが入り混ざっています。(*現在、そのルーツについてはまだ諸説あり確定はしていません。)
なので現地マダガスカル人もアジア的な親しみを感じる見た目の人もいるし、所謂アフリカ的な黒人さんもいるし、とアフリカ諸国の中でも本当に独特で魅力ある雰囲気をもってると思います。
そんな多様な文化を持つマダガスカルには「ファマディアナ」と言う亡くなった方へ敬意を示し、家族・親戚が集って絆を再確認するための儀式があります。
この儀式では、、、驚くことなかれ、なんと亡くなった方の遺骸をお墓から出すんです!
マダガスカルでは人が亡くなった場合、その遺体を現地の名前で「ランバ」と呼ばれる布地で包みます。特に防腐処理などはしません。そしてその遺体をお墓(家のような建物型)のベットと呼ばれる高床になっている場所に寝かせるのが埋葬にあたります。
ですので、お墓を開き、中に入って遺骸を持ち出すことができるんです。
このファマディアナは一般的に、一年のうちの乾季6〜9月頃に行われ、実施されるタイミングは5、7、9年起きとなってます。
儀式のやり方などは地域や家族によって変化はありますが、一般的なやり方は2日間に渡って行われます。
私たちが撮影させてもらったご家族のファマディアナも2日間で行われました。
ファマディアナの1日目は、2日目に振舞われる宴の食事の準備が主に行われます。家族の用意した豚や鶏を絞めて、解体処理をします。この手際の良さ(と生々しさ)には驚きました。。
初日のうちにもご近所さんや親戚が家族の元を訪れ、再会を喜び、食事をして帰っていきます。
ファマディアナの不思議だけど素敵だなと思ったところは、この儀式、亡くなった人に関する儀式ですが、悲しいものではないんです。
家族・親戚と久々に会って近況を話し合う機会、亡くなった方と再会し語り合う機会であって、楽しくお祝いするべき時なんです。
なので、準備している家族も訪問してくる人もみーんな笑顔。
私は従兄弟も二人しかいないし、そんな親戚の集まりをした記憶は遠い昔にしかないので、取材中、少し羨ましい気持ちになったものです。
2日目には初日とは比べものにならないくらいの人々が訪問してきます。前日に準備されたお肉料理、サラダ、お酒やジュースも振舞われ、次から次へと人が出たり入ったり大忙しです。
管楽器を使ってマダガスカル伝統音楽を演奏する楽隊も来て、賑やかな雰囲気に包まれます。
昼過ぎ、振舞いの宴が終わったら、家族・親戚が明るい伝統音楽に合わせ歌って踊ってお墓まで行進していく風景は本当に目を見張るものがあります。
そしていざお墓に入ると、先ほどまで歌ったり笑顔だった家族たちが、涙を流しながらランバに包まれている遺骸に触れているのです。
楽しいお祝いの空気と、それでも亡くなった方を思い出して泣いてしまう空気という全く別物に見える二つのものが一緒に存在していることになんだか不思議と感動してしまいました。
お墓から出した遺骸には、家族が持ち寄った新しいランバを巻きつけ、お墓の周りを遺骸を担いで歩き、そして再びお墓に戻します。
新しいランバを巻きつけることは亡くなった家族は寒くないかな、という思いやりと沢山巻くことによってその方への敬意を示しているんです。
お墓の扉が閉まったらファマディアナは終わり、皆また笑顔に戻って、家路につきます。
亡き家族との短い再会が終わり、また普段の生活に戻っていく。
こんな不思議な文化を持つ素敵なマダガスカル、動物以外の魅力もたくさんです。
ちなみに道行く現地人の交通手段・ミニバスタクシーが小さなマダガスカル国旗をルーフに掲げている場合は、ファマディアナのためにお墓から出した遺骸を運んでいます、という印です。もし乾季にマダガスカルに来た際には是非注目してみて欲しいです。
マダガスカルに関する更なる詳しい情報はジャパンアフリカ(http://www.japanafrica.jp/)までお問い合わせ下さい。